任天堂のアメリカ法人であるNintendo of Americaが、Nintendo Switchのエミュレーターとしてオープンソースで開発されている「Yuzu」の開発チームを著作権侵害で訴えました。
Nintendo of America Inc. v. Tropic Haze LLC, 1_24-Cv-00082, No. 1 (D.R.I. Feb. 26, 2024) | PDF | Copyright Infringement | Digital Millennium Copyright Act
https://www.scribd.com/document/709016504/Nintendo-of-America-Inc-v-Tropic-Haze-LLC-1-24-Cv-00082-No-1-D-R-I-Feb-26-2024
Nintendo sues Switch emulator Yuzu for ‘facilitating piracy at a colossal scale’ – The Verge
https://www.theverge.com/2024/2/27/24085075/nintendo-switch-emulator-yuzu-lawsuit
ゲーム関連のニュースライターであるスティーブン・トティロ氏が、任天堂がロードアイランド地区連邦裁判所に提出した訴状を発見したとX(旧Twitter)で報告しました。
NEW: Nintendo is suing the creators of popular Switch emulator Yuzu, saying their tech illegally circumvents Nintendo’s software encryption and facilitates piracy.
Seeks damages for alleged violations and a shutdown of the emulator. pic.twitter.com/SGZVI6Cs0x— Stephen Totilo (@stephentotilo) February 27, 2024
Yuzuはオープンソースで開発されるNintendo Switchのエミュレーターです。開発コミュニティはオンラインチャットツールのDiscord上でやりとりを行い、開発のほとんどがGitHub上で行われています。
任天堂は、Yuzuがデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の迂回(うかい)禁止規程に違反していると主張し、著作権侵害を非難しています。DMCA第120条では「著作物へのアクセスを効果的に制御する技術的手段の回避を主な目的とする製品」の設計や製造が禁止されており、任天堂はYuzuがこれに抵触していると指摘しているわけです。
エミュレーターそのものが違法なツールかどうかは非常に難しい問題です。ゲーム機をリバースエンジニアリングすることで、オリジナルのソースコードをまったく使わないエミュレーターであれば法的に問題ないという判例もありますが、近年のゲーム機は著作権保護のための暗号を解読する仕組みが取り入れられているため、エミュレーターを開発するにはこれを迂回する必要があります。
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過去にはオープンソースで開発されるゲームキューブとWiiのエミュレーター「Dolphin Emulator」がSteamでリリースする予定だったのが、突如ストアページが削除されて中止になったケースがあります。これは、ゲーム機本体のチップに搭載されている「ゲームの復号を行うために必要な共通キー」がそっくりそのままDolphin Emulatorに組み込まれていたためでした。
Yuzuの場合は「ユーザーが自分で所有しているNintendo SwitchからBIOSと共通キーを取り出して使う」という仕組みになっているとのことで、Yuzu自体の違法性はDolphin Emulatorと比べると低いといえます。しかし、任天堂は訴状の中で、YuzuがNintendo Switchの暗号化を回避可能で、著作権で保護されている任天堂のゲームをプレイできることを主眼に置いて設計されており、故意に著作権侵害を促進していると主張しました。
また、任天堂は裁判所に対してYuzuの開発・「yuzu-emu.org」というURL・チャットルーム・ソーシャルメディアのアカウントのすべてに対する永久差し止め命令を請求しています。任天堂はYuzuの公式サイトやオンライン掲示板サイト・Redditのスレッドが「Nintendo Switchの海賊版ソフトを動作させる方法の詳細な手順を提供するなど、無数の方法で著作権侵害を行っている」「共通キーを手に入れる方法や配布する方法を解説したウェブサイトへのリンク」と主張しました。
任天堂は、2023年5月に発売された「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」が100万回以上違法ダウンロードされ、同時期にYuzuの開発プロジェクトの支援者数が2倍に増加していると指摘し、Yuzuによって著作権侵害の被害を受けた可能性を示唆しています。
弁護士のリチャード・ホーグ氏は、「重要なのは、任天堂がこの訴訟をDMCAの回避に関する主張として行っていることです。エミュレーターは原則として合法ですが、適切に設計されている場合に限ります。DMCAは任天堂がエミュレーターが任天堂のゲームの制御を回避するためだけに設計されているかどうかに焦点を当てることを可能にします」と述べています。
もちろんYuzuがこの訴訟を受けて開発プロジェクトを中止し、任天堂と和解する可能性も十分ありえます。IT系ニュースサイトのThe Vergeは、Yuzuの開発陣に対して今回の訴訟について尋ねましたが、コメントは得られなかったそうです。
情報元
https://gigazine.net/news/20240228-nintendo-sue-yuzu-emulator/