無料VPNのリスクと落とし穴 – プライバシー保護にメリットがありそうだが……

安全な通信を実現する、VPN(Virtual Private Network:仮想プライベートネットワーク)やリモートワークの普及もあり、一般消費者にとっても身近な技術になりつつある。一方で、無料のVPNサービスには注意が必要のようだ。

VPNは文字通り、パブリックのネットワークの中に仮想的にプライベートなネットワークを確立する技術だ。トンネルを作る“トンネリング”と言われることもある。

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VPNを利用する3つのメリット

一般的に、VPNを使うメリットは次のようなものがある。

1. 再ルート/迂回

VPNはIPアドレスをマスキングしてくれる。たとえば日本からアメリカのVPNサーバーに接続すると、アクセスしようとするWebサイトやサービスはアメリカから訪問するユーザーだと思い、アメリカのユーザー向けのコンテンツを表示する。

Netflixなどは“リージョンブロック”として地域により提供するコンテンツを変えているが、その地域特有のコンテンツにアクセスしたいときに、その地域のVPNサーバにアクセスすればコンテンツを利用できる。

同じ考え方で、GoogleやFacebookが使えない中国でVPNを使って、GmailやFacebookを使うという使い方を耳にしたこともあるだろう。

2. プライバシー

IPアドレスのマスキングにより、トラフィックの追跡ができなくなる。追跡できるのはVPNのサーバーまで。

つまり、VPN接続後にインターネットでどのようなページを閲覧したり、遷移したのかなどの行動が追えなくなる。プライバシーを保護したいというユーザーにメリットがありそうだ。

3. セキュリティ

VPNサービスはトラフィックを暗号化する。これにより、公衆Wi-Fiなど安全ではない接続を使っている時に、悪意ある人が通信を傍受してIDを盗むなどの行為を働くことが難しくなる。


無料VPNのリスクと欠陥とは?

このようなメリットを持つVPN、もし無料で使えるとなれば飛びつきたいところだ。しかし、記事では無料VPNサービスのリスクや欠陥として次の8つを挙げている。

1. サービスが不安定

サービスに無料と有料がある時、ほとんどの場合で有料オプションの方が高度で高速だ。無料ということは、売り上げが出ていないということを意味する。問い合わせたくでもサポートがないかもしれないし、サービスのメンテナンスが行われていないかもしれない。問題が発生した際に対応が遅くなったとしても無理はない。

2. 機能に制限がある

多くの無料VPNサービスは、有料版にアップグレードしてもらうための”お試し版”という位置付けだ。そのため、有料版では提供されている機能が無料版にはない可能性がある。専用IPアドレス、接続を分割するスプリット・トンネリング、VPN接続が切れた時にインターネット接続を切断するキル・スイッチなどを例として挙げている。

3. 利用に制限がある

帯域幅は無料ではない。数千、数万もの同時接続をさばくためには十分な帯域幅が必要であり、処理の負荷に対応できるサーバーも必要だ。無料のVPNサービスに設備投資の余裕はなく、データ通信量、接続速度などが制限的になる。サービスによっては、”ログインキュー”として、順番待ちをしなければならないものもある。つまり、使いたいときに使えないかもしれないのだ。

4. 地域の制限がある

VPNを使う目的の1つに再ルートがある。サーバーがどこにあるのかが重要だ。しかし、無料サービスの場合、サーバーの設置コストを押さえるために、一部の地域にしかサーバーを置いていないものもある。この場合、地域で異なるコンテンツを見たいという目的を満たせない可能性がある。

5. プライバシーの保障なし

VPNサービスを利用する際にVPNサーバーを経由するが、VPNホストがユーザーのデータをきちんと扱っているかどうか、確証できない。ユーザーのパケットを傍受したり、ロギングしたり、改ざんしていないという保証はない、と記事は主張する。有料ではないのだから、ユーザーの利益を最優先させていなかったとしても無理はない。実際に、無料のVPNで高度な暗号化プロトコルが実装されている例は少なく、PPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)のような効果が高いとは言えないプロトコルを使用していることが多いという。

6. 悪意あるサービスの可能性も

上記の1~5に当てはまらないVPNサービスが無料で提供されていたら「なぜこんなに高度なサービスが無料なのか?」と疑うべきだという。単なる親切で、優れたVPNサービスを提供しようと思う人は、おそらくいないだろう。ひょっとして何かの悪意があるのではと疑って、分析した方が良いだろうという。

7. 広告

VPNサービスの運営には資金が必要だ。その資金を広告で得るというサービスもある。

そこで、プロキシサーバセッション固有の広告が表示されたり、広告主のトラフィック優先順位が高くなることがある。プライバシーや速度などの点で体験が損なわれてしまう。

8. データ消費量が膨大に

VPNは暗号化と復号に多くのデータを必要とする。高度な暗号化技術を利用していれば処理が効率化されるが、そうではない場合は多くのデータを消費することになる。これに加えて、7)の広告があればさらにデータの消費量がかさむ。

VPNにはメリットがあり、用途によっては不可欠なこともある。無料版か有料版か迷ったら、無料版で自分の求めるメリットが得られるのかを調べて決めてはいかがだろうか?Tipsや製品レビューサイト、Make Use Ofが「8 Reasons Why Free VPNs Just Don’t Cut It」として、無料のVPNの落とし穴を説明している。

情報元
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20231003-2784184/