ゲームやアニメのネタバレ動画を投稿の男、著作権法違反で有罪判決

はじめに

ゲームのプレー動画などをYouTubeに投稿した男が、著作権違反の罪に問われ、有罪判決を受けました。現在、ゲームのプレー画面を編集した動画や、ゲームプレーの実況中継を行う動画がYouTubeをはじめとする各種動画投稿サイトに多数投稿されています。中には発売したばかりのゲームの内容・エンディングがわかる、いわゆる「ネタバレ動画」も公開されており、各ゲームメーカーはガイドラインの見直しなどの対策を行っています。

無許可でゲームやアニメの動画投稿

今回、有罪判決を受けたのは、53歳のウェブクリエーターの男。男は、ゲームのエンディングを含むプレイ動画や、人気アニメのストーリーや結末がわかるよう短く編集された動画(いわゆる「ファストコンテンツ」)など3点を、2019年9月から2022年5月ごろにかけて、権利者に無許可でYouTubeに配信したとされています。

■ファストコンテンツとは
アニメや映画といったものを短く編集し、無断で動画投稿サイトなどで公開された動画を指します。アニメなどの動画に限らず、書籍などを数枚の画像でまとめるケースもあります。メーカーが定めるガイドラインに従わない場合や、無許可で動画を公開するとは著作権侵害となるケースがあります。

今回、宮城県警に被害情報等を提供した「一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」が発表した具体的な投稿内容は以下のとおりです。

・ゲーム「シュタインズ・ゲート 比翼恋理のだーりん」のプレー動画(エンディングを含む1時間程度の動画)のYouTubeへのアップロード
・アニメ「シュタインズ・ゲート」の動画を権利者に無断で編集し、字幕やナレーションをつけた動画のYouTubeへのアップロード
・アニメ「SPY×FAMILY」の動画をを権利者に無断で編集し、字幕やナレーションをつけた動画のYouTubeへのアップロード

今回の事件に対し、検察、弁護側は以下のように主張していました。

【検察側】
他の消費者が正規商品を購入する意欲を減退させる、コンテンツ制作の労力を踏みにじる悪質な行為。懲役2年と罰金100万円を求刑。

【弁護側】
被告の行為だけが特に悪質とはいえないなどと反論。執行猶予付きの判決を求める。

男は公判の中で、「趣味の一環として、自分の作ったものを誰かに見てほしかった」などと当初の動機を話していましたが、投稿動画が多くのアクセスを集め、広告収益を得る中で、金銭目的で投稿を続けたとしています。

仙台地方裁判所は、違法と知りながら投稿していたこと、広告収入約22万円を得ていたことなどを重要視。9月7日、男に対して懲役2年、執行猶予5年、罰金100万円の判決を言い渡しました。ゲーム動画の配信を巡って著作権法違反罪で有罪判決が出たのは初めてだそうです。

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実際のガイドラインの内容は?

昨今、問題視されているガイドライン違反の「ゲームプレイ動画」投稿。各ゲームメーカーなどはどのような内容のガイドラインを作り、対策しているのでしょうか。例えば、今回のネタバレ動画の被害に遭ったゲーム企業、株式会社ニトロプラスでは、同社の作品の著作物利用について、商業目的ではない個人のサイトに限り、テキスト・画像を転載することを認めており、転載する場合には以下に従う必要があるとしています。

・商業目的ではない個人のサイト以外での使用は禁止
・縮小以外の加工を行った画像の転載は禁止
・発売前のゲームについては、ゲーム画面の転載を禁止
・エンディング、またはエンディング近辺の画像の使用は禁止
・サウンドに関するもの、音源・楽曲・作詞・その他すべての転載を禁止 など

(「ニトロプラス/ニトロオリジン/ニトロキラル作品の著作物利用について」より一部抜粋)

今回の事件では、ゲームのエンディングの投稿、YouTube(金銭目的かつ個人サイト以外)への投稿など、権利者であるニトロプラス社のガイドラインに複数違反していたといえます。

なお、著作権者の立場で著作権侵害を受けた場合には、(1)差し止め請求、(2)損害賠償請求、不当利得返還請求、(3)名誉回復(謝罪文の広告など)、(4)刑事告訴などの措置などの対応を検討することになります。著作権の管理を行う会社などでは、侵害発生時にどのような手順・優先順位で対応を進めるのか、整理しておく必要があります。

コメント

YouTubeやTikTokなど、誰もが手軽に動画コンテンツを投稿できる時代となる中、著作権を侵害する動画の投稿も後を絶ちません。今回の事件では、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が宮城県警に対して積極的に被害情報の提供を行ったといわれています。同機構は、違法コンテンツの撲滅に注力しており、同機構や著作権管理団体等による積極的な監視が、違法な動画の投稿の抑止力となることが期待されます。

その一方で、自身の権利を適切に守るため、著作権者側でも精緻なガイドラインを用意しておく必要がありそうです。技術面・機能面の進化により、従前では一般人の投稿が難しかったタイプの動画の投稿も可能になっています。現在掲示しているガイドラインが時代に沿ったものとなっているか、定期的に確認し、アップデートさせていくことが重要です。

情報元
https://www.corporate-legal.jp/news/5426