アドブロッカー企業に移籍した元 Google 幹部、今日のデジタル広告について語る

デジタル広告に関して言えば、アドブロッカーはしばしばアドテクの世界と対立してきた。業界団体からは広告モデルで成り立つ経済を脅かすと疎まれ、一方でユーザーからはデータプライバシーやユーザーエクスペリエンスの守護者と歓迎される。

このほど、アドブロックプラス(Adblock Plus)の親会社であるアイオー(Eyeo)が、Googleの幹部従業員だったヴィガード・ジョンセン氏を引き抜き、最高製品責任者(CPO)として迎えた。同氏は10年間Googleに在籍し、アドフラウド対策のほか、広告ブロッカー、同意管理ツール、各種の収益化ツールなどのプロダクトマネジメントをはじめ、多くの重要な取り組みに携わった(Google以前はスパイダーアイオー[Spider.io]でCOOを務めていたが、Googleが2014年に同社を買収した)。

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「オンライン広告体験の改善に取り組むために、家族全員でロンドンからアメリカに引っ越した」とジョンセン氏は語る。「Googleは長年、この問題に真剣に取り組んできた。消費者が広告ブロッカーなど不要だと思うほどに、ユーザーエクスペリエンスを改善するにはどうしたらよいのだろうと」。

米DIGIDAYとの取材のなかで、ジョンセン氏はアイオーへの入社を決めた理由を「広告ブロッカー(同氏は広告フィルターとの表現を好むが)の進化だ」と述べ、「オンライン広告のエコシステムが、ユーザーとコンテンツクリエイターにとって有益な形に改善する余地はまだ残されている」と語った。

なお、インタビューの内容は読みやすさを考慮して要約・編集している。

この仕事に興味を持った経緯、Googleを辞めてアイオーに転職した理由は?

巨大IT企業はいくつもの役割を演じている。彼らはとても大きな責任を負っており、正しい行動を心がけはするが、同時にすべての役割を完璧にこなすのは困難だ。ときには難しい選択を迫られる。もし会社の収益が配信する広告の量や、その広告がどれだけ人目を引くか、あるいはトラッキングの程度に直結しているのであれば、常にユーザー本位を貫くのは難しい。私がアイオーへの転職を決めたのは、アイオーがユーザーのために戦う企業であり、このエコシステムに一定のバランスを確保しようと努力しているからだ。

一般的に広告ブロッカーはユーザーには有益と見られる一方、広告業界の認識はインターネットにとっては有害というものだ。データプライバシー意識が高まるなか、この認識に変化は見られるか?

不幸なことだが、大金が動くほとんどの業界と同じく、責任意識を持ったよいプレイヤーもいれば、悪いプレイヤーもいる。私はアドフラウド対策の領域で仕事をしていた経験上、そのことは身をもって知っている。それが難しい課題の一部だ。広告そのものや広告関係者など一律ではなく、ひと括りに語ることはできない。基本的に、アイオーはユーザーの味方という認識がある。だからと言って、すべての広告が悪いというではなく、悪い広告慣行もあるということだ。

AppleとGoogleが最近行ったプライバシーの方針転換はアイオーのような企業にとって何を意味するか?

たとえばGDPR(EU一般データ保護規則)だが、それはすべて完璧だっただろうか。批判されるべき点はなかったかと言えば、そんなことはない。しかし、方向性としてはどうか。誰もが好き放題にトラッキングできる世界から、もっと管理されたトラッキングへの移行はどうだろう。方向性としては間違っていないと思う。GDPRはプライバシーサンドボックスと同様に、方向性としてはよいと言えるだろう。

こうした制限、規制の強化、あるいは不正の一掃は、非常にポジティブな変化だと見ている。責任意識のある善良なプレイヤーに有利に働く変化だからだ。Appleの方針変更によって、バレればダメと言われることを、コッソリやるのが難しくなっている。我々は責任ある透明なメカニズムへの移行を心から歓迎する。それはエコシステムにとってよいばかりでなく、常にそこをめざしてきた我々にとってもよいことだからだ。

さらに目に見える改善を推進するには、ほかに何をなすべきか?

オンライン体験を楽しんでいるところ、ひどい広告体験に邪魔をされれば、「もううんざりだ」という気持ちになる。それが許容範囲を超えれば、何とかしようと行動を起こす。過去にはポップアップ広告があった。当時、ポップアップ広告はネットに蔓延しており、多少は抑制がきくようになったが、それでも大きな問題だった。私としては、今日の同意取得のあり方に疑問を感じている。こちらもかなり目立つうえ、ユーザーの要望とは違う方向性だと思う。

現行の同意取得の枠組みをめぐる問題解決に、アイオーのような企業が果たす役割はあると思うか?

たとえば、1日に20のWebサイトにアクセスすれば、20の同意体験をすることになる。サイトごとに多少の差はあれ、ユーザーは選択を迫られる。必ずしもよいとは言えない重複の一例だ。サードパーティCookieの制限も同意管理に影響を与えうる。Cookieの使用に関してユーザーに選択肢を与え、それをCookieに保存し、そのCookieが後に削除されるというケースさえある。

なぜそんなことが起こるのか、だいたいの検討はつくが、結果的に13ヶ月後どころかほんの1週間後に同じ質問を繰り返されることになる。ユーザーから見れば、エクスペリエンスの改善の余地は十分にあり、それは私たちの考える方向とも一致する。

情報元
https://digiday.jp/agencies/longtime-google-exec-joins-adblock-plus-parent-eyeo-as-chief-product-officer/