スマートフォンの画面がバキバキに割れていたり、ヒビが入っていたりしたまま使っている人を見かけたことがあるだろう。もしかしたら、あなた自身がそうかもしれない。スマホの画面に使われているガラスは年々強度が増しているのだが、それを実感できない人は多いように思う。なぜスマホの画面はすぐに割れてしまうのか。(ビジネス書作家 戸田 覚)
画面がバキバキに割れている
スマホを使っている人が結構いる
仕事柄、街中の人々がどんなスマートフォンを使っているのかが気になって、結構チェックしている。電車の中やカフェでも人のスマホやパソコンの機種をちょっと確認する日々だ。
スマホは相変わらずiPhoneが多いのだが、都内では若い人ほどiPhone率が高いように思える。
そんなチェックをしていて気になるのが、画面の割れである。画面が割れたスマホをそのまま使っている人がとても多い。ちなみにこの割れとは、バキバキに割れているもの以外に、ヒビが入っていたり、角が欠けていたりするものも含む。
画面が割れていると指をけがする可能性があって危ないのでいち早く修理してほしいところだが、それなりの金額がかかる。例えば、iPhone 14 Proの場合、Appleで修理をすると5万800円とかなり高額だ。有料サービスのAppleCare+に加入していれば3700円で済むが、修理に出すのも面倒だ。
ちなみにApple以外の店では、修理費は7万~8万円ととんでもない額になっている。もちろん、iPhone 14など下位のモデルはもう少し安い。
若い人ほど、画面が割れたまま使っているのをよく見かける気がするが、これは運動量が多いから落とす可能性が高いのだろう。もしくは、割れても修理するお金がない可能性もある。無理をして買ったiPhoneのガラスの修理に5万円以上は出せないと推察する。
ということで、今回はスマホのガラスが割れる理由を考えていきたい。
ガラスが強くなっているのにスマホの画面が割れる理由
実は、スマホのガラスは年々強くなっている。iPhone 12以降はCeramic Shieldという素材を採用して、従来のガラスの4倍強くなったという。AndroidスマホもGorilla Glassのバージョンが年々上がっており、強度が増している。
ところがだ、われわれの体感では少しも割れにくくなったとは思えない。相変わらず落とせば画面が割れることがある。
以前、ガラスメーカーの米コーニングに取材をしたことがあるのだが、この理由は明確で、スマホのガラスは年々強度が上がっているものの、年々薄くなっていく傾向があるという。つまり、素材自体の強さをメーカーはうたっているが、厚みや落下に対する強度は記載していないということだ。
スマホは薄い方がかっこいい。ガラスが薄ければ本体もそれだけ薄くなっていく。素材の厚みを薄くできるなら薄型化の設計も楽だ。
とはいえ、そろそろ薄さ競争も一息ついているので、今後はいっそう割れにくくなることを期待したい。
一度落としただけでは大丈夫なことも
ガラスが割れるプロセスとは?
実は、スマホのガラスは一度落としても割れないことが多いそうだ。一度の落下では表面に薄い傷がついたり、角がほとんど見えないレベルで傷になったりする。実はその状態でもう一度落とすと思いきり割れる可能性が高いという。
これは、プラ板などを曲げても割れないが、カッターで軽く切れ目を入れてから曲げるとパキッと割れるのと同じ理屈だ。最初の落下でガラスに傷がつくと、次の落下で角から落ちて本体がゆがんだときに割れてしまう可能性がある。スマホは落ちたときにかなり本体がゆがんでいるのだ。もちろん、これはガラス製ボディーの裏面も同じだ。
ガラスを割れにくくする「二つの方法」とは?
ガラスを割れにくくするには、フィルムを貼るのが一つの手だ。フィルムを貼っておくことで最初につく傷を防止できるので割れにくくなる。もちろん、ガラスフィルムでも樹脂製のフィルムでもいい。
もう一つの手は、スマホをケースに入れてフチを高くすることだ。フチがガラス面よりも少し高ければ、正面から落下してもガラスには当たらない(地面の凹凸がない場合)。市販のケースはだいたいフチが高くなっているので有効に働いている。
筆者は仕事柄、複数台のスマホを長年使っているが、気を付けている上にケースとフィルムによる保護のおかげで一度も画面のガラスを割ったことがない。AppleCare+にも未加入だ。
まあ、メーカーはスマホをスタイリッシュにするためにガラスを薄くしているのに、フィルムやケースでそれを台無しにしている面もあるので、皮肉な話ではあるのだが…。