「欲しいものは、いつも売り切れ…」絶好調だったワークマンにかげり!?躍進を妨げる“ある事情”

冬物本番の昨年11月、売り上げが前年比マイナスに… 

<躍進を続けていたワークマンの売り上げが昨年11月、前年比マイナスとなった。その後12月は持ち直したが、人気商品の在庫切れに対する不満の声が多い。ワークマンに何が起こっているのか?>

この5年間くらいですっかり大手プチプラブランドの一角となったワークマンですが、想像以上に一般大衆に浸透していると感じられます。衣料品・アパレル関連の仕事をしているのは親戚の中で自分だけで、そのほかはアパレル関連に全く縁も興味も無いのですが、その親戚の中でも最近ワークマンで服を買っているという中高年が増えているので、いかに浸透しているかを感じさせられます。

そんなワークマンですが、なかなか商品が手に入りにくい状態が最近は続いています。実店舗になければネット通販で、と思ってネット通販を開いても「NEW」マークが付けられている(要は新規投入商品ということ)にもかかわらず完売になっていて、いつ補充があるのか分からないという商品が数多くあります。

人気ゆえの…

ではどうしてそんなことになっているのかということについて今回は考えてみましょう。

まず、最大の理由は

「ワークマンへの人気が高まり続けているから」

です。供給量よりも需要が増えれば品切れになるのは当然です。

どうしてこれほどにワークマンの人気が高まり続けているかというと、もともとワークマンに限らず作業服というのは各社ともに低価格で高機能でした。そこに加えて近年はカジュアル用途にも耐えうるくらいにはデザインも洗練されつつあります。実際にワークマンの商品価格はジーユーの定価より少し安いくらいで、ユニクロの定価の半額くらいとなっていますから、デザイン性がマシになれば「ワークマンで十分」というカジュアル使いの需要が増えるのは当たり前といえます。

しかし、それにしてもジーユー、ユニクロと比べて品切れ比率があまりにも高いのは何故かということになります。それにはワークマン特有の背景が存在するからです。

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作業服メーカーのモデルチェンジは2~5年に一度

ワークマンは本来専門店なので、様々な作業服メーカーから商品を仕入れて店頭で販売していました。一般の方にはなじみがない作業服メーカーですが自重堂やジーベック、クロダルマなどなど数多くの有力メーカーが存在する一大市場なのです。

けれども一般のカジュアル服と異なり、カジュアル服ほどには流行の“流行り廃り”のスピードが速くありません。そのため2~5年に一度モデルチェンジするというサイクルで十分で、2~5年間分を作り置いて売り減らすという販売方法でした。ワークマンがカジュアルに進出した当初に語っていた「2~3年はモデルチェンジせずに売り切り、売り切ってからモデルチェンジします」という手法は作業服業界特有のものです。

一方、カジュアル業界にもさまざまな手法はありますが、期初に大量に作り込んで期末までに売り減らすという手法はユニクロが得意とするもので、ユニクロは期初に大量に作り込むことによって1枚当たりの製造コストを引き下げて低価格販売を可能にしていたのです。

ユニクロとワークマンは大量に作って売り減らすという手法においては同じなのですが、品切れ具合は現在のワークマンの方がユニクロよりも圧倒的に高いという状況にあります。推測ですが、期初の作り置き量がワークマンはユニクロよりもかなり少ないのではないかと考えられます。少なくとも今のワークマンの需要量に対しては少なめだと考えざるを得ません。

フランチャイズ店舗が95~96%

次にワークマンが他のプチプラカジュアルブランド店と大きく異なるのはフランチャイズ比率が異様に高いことです。シーズンによって店舗数の増減があるので微妙に上下動しますが毎シーズン95~96%となっています。

一般的に、カジュアル店やファッションブランド店でこれほど高いフランチャイズ比率のブランドはあまり存在しません。

ユニクロの国内フランチャイズ店舗数は2022年8月期末で全809店舗中10店舗しかありません。フランチャイズ比率はわずかに1.23%です。過去5年間で最もフランチャイズ店舗数が多かった20年8月期末でも813店舗中46店舗しかなく、フランチャイズ比率は5.66%に過ぎません。ワークマンはフランチャイズ比率がユニクロとは真逆になっているのです。

どんなシステムにも必ずメリットとデメリットが生じますが、フランチャイズ店舗数の比率があまりにも高すぎることが、補充追加投入がされにくい理由の1つだと考えられます。なぜなら、フランチャイズ店の商品仕入れ費用はお店側が支払うことになるからです。

フランチャイズ店とすれば追加補充仕入れをすればするほど仕入れ代金が発生することになりますから、完売したからといって気軽に追加補充しようとはしません。できれば売り切れ御免の方がありがたいのです。

また期初に大量に仕入れるかというとこれも難しいといえます。例えば、現在ワークマンの公式オンラインサイトには店頭在庫を検索できるシステムが付いていますが、品切れになっている新商品(NEWマーク付き商品)の店舗在庫数をいくつか確認してみたところ、各商品の各サイズの在庫数量が1点か2点しかない店舗が多く見られました(在庫無しも多かった)。もちろん、新商品は膨大な型数があるので全品番の店頭在庫を確認できてはいませんが、最小限の在庫数しか持っていないフランチャイズ店が多いため、すぐに完売になり、さらには追加補充が積極的にはなされていない可能性が高いと考えられます。

一方、ユニクロやジーユーは直営店がほとんどなので、店頭で品薄になると気軽に補充追加ができます。そこに店舗からの支払いは発生しません。また、各社チェーン店では自社ブランド同士で品薄商品を集めたり、他店に発送したりします。

かつて自分が勤務していたチェーン店もそうでしたが、自社内でA店が品薄になってB店に豊富に余っていたら、本部からB店にA店へその商品を送るように指示されました。これによって、A店には売れ筋商品が復活するというわけです。チェーン店なら基本中の基本のオペレーションですが、フランチャイズ店ばかりのワークマンでは、各フランチャイズ店のオーナーが異なるため、このようなオペレーションはできません(仕入れ支払いが発生するため)ので、売り切れっぱなしということが起きやすくなります。

ネット通販の強化が難しい理由…

では、ネット通販を強化して売りまくればいいじゃないかという声を聴くことがありますが、ワークマンの場合はこれもなかなか難しいのです。

理由は実店舗のほとんどがフランチャイズであるのに対して、ネット通販はワークマン本社の管轄になっているからです。ネット通販の売上高が激増すればフランチャイズ店からの反発が起きることが容易に想像されます。

通常のチェーン店であれば、直営実店舗で売れようがネット通販で売れようがどちらでも構わないのですが、ワークマンの場合、本社管轄のネット通販の売れ行きが激増することはフランチャイズ各店の売上高を奪うことになってしまうため、他のアパレルチェーン店のように安易にネット通販を強化するわけにもいかないのです。

個人的には、カジュアル分野においてほとんどをフランチャイズ店で運営することは難しいと考えています。

品切れ状態が続く最近の状況はメリットもありますがデメリットもあります。まず、メリットとしては他の人気ブランドと同様に「売り切れたら追加されにくいから発売当日に買わなければならない」と消費者に認識されやすくなるということです。逆にデメリットとしては「いちいち、入荷日を確認してその都度必ず買うのははめんどくさい」と捉えられ、客が離れるという可能性もあることです。

この品切れ問題についてワークマンも何らかの対応策は考えているといわれています。いずれにせよ、ワークマンの作業服とカジュアルウエアの二刀流販売はまだまだ過渡期ですので、今後、どのようにこの問題を解決していくのか注目してみたいと思います。

情報元
https://friday.kodansha.co.jp/article/291583?page=1