世界パソコン市場、過去最大の落ち込み

パソコンメーカーは2022年に急激な需要減を経験したが、23年はさらに困難な状況になりそうだ。アナリストらは24年になるまで市場が完全に回復することはないとみている。

22年10~12月28.5%減、22年通年16.2%減

 米調査会社のガートナーによると、22年10~12月期の世界パソコン出荷台数は1年前と比べて28.5%減少した。これはガートナーが統計を取り始めた1990年代半ば以降最大の減少幅。

 ガートナーの北川美佳子氏によると、多くの消費者は新型コロナ禍時の在宅勤務やオンライン授業ために購入した比較的新しいパソコンを持っており、消費者需要はここ数年で最も低いレベルになったという。

 法人向けパソコン市場も景気減速の影響を受けている。法人向けは22年7~9月期に需要が減少し始め、その後さらに悪化している。企業はパソコンのライフサイクルを延ばし、買い替え時期を遅らせている。法人向け市場は24年になるまでプラス成長に回復することはないと同氏はみている。

 米調査会社IDCも、「明らかにパンデミック時のパソコン特需は終わった」と指摘する。通勤や通学などのパンデミック前の日常生活が戻ってきた。加えて、インフレが進み世界的に景気後退懸念が強まっている。こうした中、企業や消費者は倹約を迫られており、パソコン需要が冷え込んでいるという。

 ガートナーのデータでは22年10~12月期の世界パソコン出荷台数は6530万台。IDCのデータでは6720万台だった。ガートナーによると、22年の年間出荷台数は2億8620万台で、前年比16.2%減。こちらも同社が統計を取り始めて以降最大の減少幅だ。

世界シェア首位の中国レノボ28.6%減

 22年10~12月期のデータをメーカー別に見ると、出荷台数が多かったのは1位から中国レノボ・グループ(1566万3000台)、米HP(1321万6000台)、米デル(1088万4000台)、米アップル(701万1000台)、台湾エイスース(487万6000台)の順。

 レノボの世界市場シェアは24%と、前年水準を維持したものの、出荷台数は前年同期比28.6%減少した。これも統計開始以来最大の減少幅。レノボの出荷台数は、日本を除くすべての地域で減少し、欧州・中東・アフリカ(EMEA)と中南米で同30%以上減少した。

 HPとデルも歴史的な落ち込みを経験した。HPの出荷台数は同29.1%減。EMEAでは同44%減少した。デルの出荷台数は同37.0%減と、上位メーカーの中で最大。デルは、大企業向け製品の需要が低迷し、22年後半に打撃を受けた。一方、アップルは同10.2%の減少にとどまり、上位メーカーの中で減少幅が最も小さかった。

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ウクライナ侵攻やゼロコロナ政策転換の影響

22年10~12月期の世界出荷台数を地域別に見ると、EMEAの減少幅が37.2%と最も大きく、これにアジア太平洋地域(29.4%減)が続いた。米国は20.5%減だった。

EMEAではインフレ圧力や金利上昇のほか、ロシアのウクライナ侵攻に伴う政情不安が需要に影響を及ぼした。アジア太平洋では主に中国の需要減が同地域全体の落ち込みにつながった。

中国のパソコン市場は例年10~12月期に活況を呈すが、22年は中国政府による予算削減と、ゼロコロナ政策の転換による先行き不透明感が需要を大幅に減少させた。

ガートナーの北川美佳子氏は、「パソコン市場はパンデミックによる20年から21年の異常な成長の後、明らかに下降トレンドが始まっており、これは24年初頭まで続く」と分析している。

情報元
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73544