中島みゆき、サブスク解禁でバイラルチャート席巻 幅広い世代の心を動かす2つの要素

Spotifyの「Daily Viral Songs (Japan)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの12月21日付のTOP10は以下の通り(※1)。

※1:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2022-12-21

1位:FIFA Sound「The Official FIFA World Cup Qatar 2022™ Theme」
2位:&TEAM「Under the skin」
3位:10-FEET「第ゼロ感」
4位:中島みゆき「銀の龍の背に乗って」
5位:ano「ちゅ、多様性。」
6位:Appare!「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」
7位:結束バンド「なにが悪い」
8位:美波、大橋ちっぽけ「水星 × 今夜はブギー・バック nice vocal meets Yuri on ICE」
9位:結束バンド「あのバンド」
10位:INI「SPECTRA」

 今回は50位までに8曲、100位まで広げると計16曲がランクインしている、中島みゆきにスポットを当てる。11月28日にシングル曲全91曲をサブスクリプション音楽配信サービスで解禁したことを受けての結果だが、これは中島みゆきの楽曲が幅広い層に浸透している証拠だ。

 1975年にデビューした中島みゆきは、オリコンチャートにおいて、1970年代~2000年代、4つの年代に渡りシングルチャート1位を獲得している。また、他アーティストへの提供曲では、1970年代~2010年代と、こちらは5つの年代に渡りシングルチャート1位を獲得している。さらに、彼女の楽曲「糸」を原案にし、2020年に公開された映画『糸』(主演・菅田将暉と小松菜奈)が大ヒットしたことも記憶に新しい。

 50位までに絞ってランクインした曲を挙げると、最高位は4位「銀の龍の背に乗って」(2003年)、13位「ファイト!」(1994年)、21位「空と君のあいだに」(1994年)、25位「時代」(1975年)、26位「地上の星」(2000年)、28位「糸」(1998年)、30位「悪女」(1981年)、40位「ヘッドライト・テールライト」(2000年)と、バイラルチャートでも4つの年代からのランクインを果たしている。

これらの実績だけ見ても、中島みゆきは文句なしで国民的アーティストの1人と言える。ではなぜ、こんなにも中島みゆきの楽曲は、世代を超えて人の心を動かし、身体に染み込むように残るのか。ひとつは歌詞にある。デビュー当時から個人の心情や他人との関係性をテーマにしていること、文学的で独特の比喩表現などは一貫しているが、決して難しくなく誰にでもわかるストーリー性が魅力である。特に2000年代以降の楽曲は、少し無骨な言葉を随所に配置しながらも、スケール感ある物語を紡ぎ出しており、聴き手の人生観とリンクする包容力がある。「銀の龍の背に乗って」は、タイトルからして、リアルとファンタジーの間を紡ぐような独特の描写が印象的だが、抗えない現実をしっかり歌っているのが中島みゆきらしい。しかしながら現実の厳しさだけに終わらず、必ず次へ向かう。しかも物語のページをめくるように自然に。この“自然にページをめくる”ような物語性が中島みゆきが紡ぐ歌詞の真骨頂だ。

そして、彼女の真骨頂はもうひとつある。その歌声だ。「銀の龍の背に乗って」だけ聴いても、ブレスを巧みに使い柔らかさと力強さの間をしなやかに行き来する音程の確かさ、短いしゃくりや、ロングトーンの細かいビブラート、言葉やメロディで瞬時に変わる声音など、随所でそのスキルを存分に堪能できるが、注目したいのはリズム感である。フレーズの歌い出しで、ほんの一瞬だけ間を置いて歌い始める歌唱法は、「銀の龍の背に乗って」や「空と君のあいだに」「糸」など歌い上げるようなの楽曲では軽快さを、「ファイト!」のように軽やかに歌う曲では、聴き手に次の言葉を強く印象づけるフックになっている。

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 「銀の龍の背に乗って」は、〈あの蒼ざめた海の彼方で 今まさに誰かが傷んでいる〉という歌詞から始まる。この曲に加えて、「ファイト!」と「空と君のあいだに」が上位3曲を飾ったことは、まさに今の時代が反映された結果だろう。

 さあ、次のページをめくろう。もうすぐ2023年がやってくる。

情報元
https://realsound.jp/2022/12/post-1222251.html