iPhone 14は「史上最高のiPhone」だが、わかりやすい進化は遂げていない:製品レビュー

アップルが自ら「史上最高のiPhone」と謳うiPhone 14。動画撮影時の手ぶれ補正など大幅な進化は実感できるが、ひと目で“新しいiPhone”とわかるような飛躍的な変化は見受けられない。

中略

中身にも外見にも、ほとんど変化なし

外観のデザインは「iPhone 13」とまったく同じだ。もし前のモデルと比べて厚さが7.65mmから7.8mmに増え、重さが2g近く減ったことが瞬時にわかった人には景品を渡したい。ディスプレイは6.1インチの「Super Retina XDRディスプレイ」で、リフレッシュレートは依然として60Hzのままだ。多くの同価格帯のスマートフォンとは異なり、滑らかな表示が可能な120Hzのリフレッシュレートは得られない。どうしても120Hzのリフレッシュレートを必要とするなら、iPhone 14 Proのいずれかを選ぶ必要がある。
アップルはiPhoneの小型モデル「mini」シリーズを廃止し(残念なことにまったく売れなかった)、「大いことはいいことだ」といった以前のサイズ展開に戻した。新たに6.7インチのディスプレイを搭載した「iPhone 14 Plus」を追加したのだ。この新モデルはiPhone 14とほぼ同一だが、バッテリー駆動時間が少し長くなっている。 どちらのサイズも、引き続きIP68規格の防水・防塵性能を備えている。筐体はiPhone 13と同じく、強化セラミックガラスとアルミだ。ディスプレイの輝度も変わっていない

どこからでも呼べる緊急サービス

iPhone 14の大きな変更点のうち2つは、一度も使わなくて済むことが望ましく、テストし難い機能だ。個人的にはこうした機能をテストする仕事は大好きなのだが、わざとクルマで事故を起こしたり山から落ちたりする気まではない。お許しいただけるだろうか。 「衝突事故検出」機能がアップルの言う通りに動作すれば、まさしくスマートな新機能だ。新たに搭載されたデュアルコアの加速度計と、ハイダイナミックレンジのジャイロスコープを音声のモニタリングと組み合わせることで、最大256Gの大がかりな衝突事故まで検出できるという。衝突事故が検出されれば、iPhone 14は自動的に救急サービスに電話をかけ、担当者に事故と位置情報を伝えるループ音声を再生する。「ヘルスケア」アプリに登録されている緊急連絡先に衝突事故発生の情報を通知することも可能だ。 人里から離れ、携帯電話の電波がないなか危険な状況に陥った場合には、「衛星経由の緊急SOS」[編註:日本では未提供]を利用できる。地上にあるアンテナと地球を周回するグローバルスターの衛星が接続し、救急チームかアップルの中継センターとチャットできる機能だ。この機能を使う上で重要な点は、iPhoneから衛星を探すために十分な量のバッテリー残量をキープしておくことだろう(屋内からは通信できないことも覚えておきたい)。 

eSIM化が強制的に進む米国モデル

iPhone 14は、物理SIMカードがなくても携帯電話ネットワークに接続(セルラー接続)できるようになった。物理SIMカードの代わりに「eSIM」を利用できるのだ。これは実は新しい技術ではなく、「iPhone XS」から採用されている。だがアップルは、米国向けのiPhone 14からはSIMカードのトレイを完全に廃止した。英国を含むほかの国のユーザーであれば、引き続き物理SIMカードを利用できる。通信キャリアが対応していれば、iPhone上でのeSIMの設定は簡単だ。個人的に契約している通信キャリアは対応していないので、昔ながらのSIMトレイがあるモデルで助かった。編集部の別のメンバーは、iPhone 13 ProからiPhone 14シリーズへと自分の電話番号を何の問題もなく移行できたという。ボタンをたった1〜2回押すだけで、数分のうちに電話番号が新しいiPhoneに登録されたようだ。ところが、AndroidスマートフォンからiPhoneへの移行は、iPhone同士の移行よりも厄介になる(iPhoneからAndroidに戻すことも、特にAndroidスマートフォンがeSIMに対応していなければ相当に面倒だ)。おそらく、米国では通信キャリアが発行したQRコードをスキャンしなくてはならず、使えるようにするには業者に電話をかける必要があるかもしれない。
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手ぶれ補正は大幅に性能が向上

iPhone 14のカメラの性能は、iPhone 13と比較するとわずかに向上した点がいくつかある。とはいえ、超広角カメラには(iPhone 14 Proの両モデルとは異なり)ほぼ変化がない。ただし、メインカメラの絞りがf/1.6からf/1.5に改良されており、イメージセンサーの面積も大きくなった。このため暗い場所での写真と動画の撮影性能が49%向上したと、アップルは説明している。試しに写真を夜に撮影してみたが、それほど性能が上がっていないように感じた。全体的にはiPhone 14のほうが性能は高かったものの、いくつかの写真では実質的な差はあまり見当たらない。前面に搭載された自撮り用の「TrueDepthカメラ」には、オートフォーカス機能が初めて搭載された。その性能は素晴らしく、問題なく機能している。だが、どうしてこの機能がこれまで搭載されていなかったのかと疑問に思ってしまう。さらに絞りがf/1.9になったことで、暗い場所での自撮りの画質が向上した(アップルによると、「Photonic Engine」のおかげで品質が最大2倍になったという)。

「史上最高のiPhone」と呼べるのか?

よく知られているように、アップルは好んで「史上最高のiPhone」という言葉を使う。確かにそうだが、これは誤解を招く表現でもある。どうでもいいような機能を追加したり、製品重量をわずか0.07オンス(1.98g)削減して「過去最高」を謳うことなら、どんなメーカーでもできるからだ。これに対して「改良版」のあるべき評価基準とは、改良点について事前に聞いていない顧客でも変化に気がつけるかどうかだろう。iPhone 14は、この評価基準には達していない。iPhone 14をテストし始めてから1週間。動画をストリーミング再生したり、写真を撮影したり、電話をかけたり、ウェブサイトを閲覧したりしてみた。ゲームをプレイして(Grand Mountain Adventureは最高なので、ぜひ試してみてほしい)、音楽も聴いた。しかし、iPhone 14の代わりにiPhone 13、それこそ「iPhone 12」で同じことをしても、ほとんど違いを感じないだろう。

iPhone 14は“標準モデルのiPhone”としては過去最高だが、改良点は微々たるものだ。旧モデルでも最新版の「iOS」を使っている限り、多くの人は買い換える必要がない

情報元
https://wired.jp/article/apple-iphone-14-review/